子どもが部活動中にコーチや顧問から威圧、暴言、暴力を受けて競技から離れたり、学校を辞めたり、最悪は自ら命を絶つという悲惨な事件がたびたび報じられています。非常に残念で悲しい出来事で、見聞きするたびに「なぜ」「どうして」と嘆くばかりです。

 私は25年ほど前から中学生を中心にバスケットボールの指導をしています。実は私も指導を始めた当初は威圧や暴言などを使う指導をしていました。選手がたるんでいればたくさん走らせ、苦しむ姿を見ては強くなるために必要なことだと信じて疑いませんでした。

 ある日、自分の指導を冷静に見つめ直したことをきっかけに、それまでのような指導をやめて変わることができ、現在も指導者としてチームに携わることができています。当時の自分を含め、このような指導をしている方はどこかで自分が評価されたい、強いチームのコーチ・監督として周りに認められたいと思い、自分に従う人間がいることに酔ってしまうのでしょう。

 指導の目的は何でしょうか。選手たちをどこに向かわせたいのでしょうか。そもそも誰のためなのでしょうか。選手が言うことを聞いてくれるか不安で、威圧することで選手をコントロールしているだけでコーチングではなくなっているのではないでしょうか。

 コーチが選手や生徒を信じられず、厳しく管理し、監視し、威圧し、時には暴言、暴力に発展してしまう。そうなると選手は意見も言えなくなり、おびえながら練習や試合をするようになるのです。

 選手や保護者はコーチに対し「指導していただいている」、コーチは選手に対し「指導してやっている」という感覚になってしまいがちです。選手にはもちろん指導者が必要ですが、指導者にも指導を受ける選手が必要で、選手がいなければ指導者にはなれないのです。指導できることを幸せに感じ、感謝し、指導を受ける側とする側、互いが認め合い信頼し合わなければならないと考えます。

 多くの指導者は怒りたくて怒っているのではないはずです。

 教えた通りにやってくれない、自分の思っている通りにならない、やる気が見られないなどさまざまな理由が考えられますが、全ては選手との信頼関係を構築できなかったことが原因でしょう。試合の時に実力を発揮できるような指導ができていなかった、やる気を出せるチームづくり、雰囲気づくりをできなかった…。もしかしたらまだまだ時間が必要だったのかもしれません。

 選手に向けている言葉は自分自身に返ってきます。今も暴言や暴力などをしてしまう指導者の方がいたら、ぜひ一度自分を冷静に、客観的に見つめ直し、選手の立場になってみてください。その指導を受けたいですか? 練習に来たいと思いますか? 全てはそこから始まります。

【略歴】 バスケットボールの実業団チームで3年間プレー後、高崎商業高女子バスケ部コーチなどを経て現職。今年5月、県内初の時間貸し民間体育館を開設した。東海大卒。