▼日めくりカレンダーがすっかり薄くなった。あすは正月事始めの最初の行事「すす払い」の日である。門松用の木を山に取りに行く「松迎え」の日でもあり、新年に向けた準備が始まる

 ▼掃除と言えば先月、世界文化遺産の富岡製糸場でボランティアによる清掃活動「クリーンツーリズム」が行われた。11月13日の「いい遺産の日」に合わせ、全国各地で実施された

 ▼富岡製糸場には県内外から70人ほどが集まり、国宝の西置繭所を中心に清掃した。参加者の過半数は40代以下。主催者のアンケートによると、「貢献活動への関心」が主な動機という

 ▼京都や富士山では訪日客によるオーバーツーリズム(観光公害)が社会問題になっている。その一方で世界遺産や観光地の持続可能性を考え、自発的に行動する人たちがいる。当事者意識を持って清掃する姿に感謝の気持ちが湧いた

 ▼法隆寺や姫路城が日本初の世界遺産に登録されてからちょうど30年を迎えた。「富岡製糸場と絹産業遺産群」は来年、登録から10年となる。観光公害と聞くと、構成4資産に観光客が押し寄せた当時の熱気を思い出す

 ▼ブームを体験した世代が新たな家族や仲間を連れて各地を再訪しているらしい。世界遺産はいま、静かに向き合う成熟期を迎えたのかもしれない。木骨れんが造りの富岡製糸場を見上げるたび、蚕と生糸が育んだ郷土の歴史をあらためてかみしめている。